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SashiGaneの趣味活動用ブログ。つくりが古めかしい。 / pixiv / twitter / ニコニコ静画

2016年1月8日金曜日

提督艦娘戦後合同を読んだ

サークル「月見ル君想フ」さんの提督艦娘戦後合同「海図は無い、けれど共に行こう」が手元に届きました。
>>メロンブックスはこちら (←特設ページ。作品詳細やサンプルが見られます)
>>Boothはこちら

まずは、主催のにぐれど氏に多大なる感謝と、拍手を。
国語便覧や歴史資料集にも比肩しうる物理的ぶ厚さに負けないくらい、「濃厚でまろやか」な一冊でした。ほんとうに、こんなものすごい作品群の末席にわたくしめなんぞがいていいんだろうか……。

ただいま通販のほうは売り切れだそうです。
でも大丈夫、1/17の「砲雷撃戦よーい!」にて、サークル「@.CTION ZERO」さんのスペース(L-16)委託再販が決定したそうです! ちょっと気になった方はぜひ!






さて、合同誌をはじめからおわりまで読んでの感想(というか紹介文的な何か)を、
各作品ごとに一筆申し上げさせていただきます。
一作につき数行ずつではございますが、なにぶん長くなりますので折りたたんでおきますね。






(以下、敬称略)

1:これから先のわたしには。:いずみやその
実物の艦艇も長い戦後を過ごした、雪風のお話。
戦後を語る艦娘として、合同の幕開けにふさわしい幕開けでした。
苦も楽もひっくるめて後世に語り継ぐという、新たな任務を彼女はみずから選びました。
けっして楽しいばかりの道ではないことを彼女は理解していたのでしょう。
「光を勝ち取ったのなら~」の独白に、ちいさな雪風の大きな覚悟がにじみ出るようです。

2:艦娘と老夫婦:ひきわり
戦いが終わった後も鎮守府に残った艦娘・時雨のお話。
ほかの仲間たちとは違い、身寄りがないため「これから」が漠然としている彼女に、
年老いた提督夫妻が差し伸べたあたたかい手。
それは時雨にとってまさしく明るい未来へのきざしだったことでしょう。

3:戦いのあとに:えんちゃん
戦い抜いたあと、空白の未来に気づいた夕張のお話。
いざ平和が訪れても、戦ってきたころの一切合切が清算されるわけではありませんよね。
しかし、戦士以外の道が見えなかった夕張や喪失感に潰されかけていた如月にも
平穏な未来への足跡が聞こえ始めたようで、胸をなでおろします。
そんな艦娘たちにそっと寄り添う提督の茶目っ気がアクセントです。

4:私とあなたの恋模様:砂上
艦娘と学徒の二足のわらじをはく叢雲のお話。
あまりにも多くを失った世界で育まれる彼女と提督の恋は初々しく、青ささえ感じさせます。
しかしそれこそが、荒野に芽生えるみずみずしい若葉のような、ちいさな希望の象徴です。
走り去る軽トラックの行く先に、晴れやかな未来を想像させる一作でした。

5:Picture Book:アキ
提督と結ばれ、人生の新たな岐路を迎える金剛のお話。
戦うために生まれた宿命はかくも残酷なのか、とあやうく打ちひしがれかけました。
待ち受ける試練にオーバーラップする彼女の過去、それらをなおひっくるめて、
あくまで前向きに未来を描き出そうとするバイタリティは金剛ならではの魅力です。
光り輝く金剛と彼女の希望を何より大切にする提督のペア。
そんな輝かしい一家のこれからを心から応援したくなります。

6:来し方行く末絶え間なく:黒田冬彦
戦禍に片足を奪われながらもひたむきに生きる鳳翔の話。
艦娘と提督として長年連れ添った二人のありようは心の通った夫妻のようでありながら、
取り返しのつかないすれちがいと紙一重。そんな絶妙な心の動きを、
なめらかな紙の目をなでるような丁寧な筆致で描きだしています。
私もこんな文を描けるようになりたい、です。はい。

7:青魚:おキヌ子
にぎやかな港町の鎮守府で、おじいちゃん提督とよりそう山城のお話。
戦いが終わり、みずみずしい旬の恵みを取り戻した市場の活気と、
あまりに年老いた提督と山城がぽつぽつと言葉を交わす室内の湿った空気。
この鮮やかな対比がまぶしく、ゆえに山城の涙の理由が絵画的に目に浮かぶようです。
彼女の最後の一言は、おじいちゃん提督だけでなく、あらゆる読者の心への直撃弾でしょう。

8:むすんで ひらいて:あきたいし
第二の人生の扉の前で、ひとつの決断をする飛龍のお話。
平和な生活を送るには、枷になるであろう戦いの記憶は置いていかなければならない。
それでも「体が覚えている」を地で行く大胆な決断をした飛龍の想いがいかに深いか。
提督でさえ偶然にかけるしかなかった再会を実現させたのは、この想いの成すところでしょう。
これはもはや偶然の結果ではなく、みずからの手でつかんだ運命と言うほかありません。

9:ある海のある船の上で:御勅使川ツバメ
捕鯨という、海上で命のやり取りをする道を提督とともに選んだ長門のお話。
彼女と提督が交わすやりとりを、秋津洲や速吸といっしょにこっそりのぞいている作品です。
合同の中でもめずらしい、幸せな夫婦であるのはもちろんのこと、
戦士たちの絆のような潔い関係に、こっそり見ている方も清々しい気持ちになれます。
どうやら、戦後の戦艦長門には捕鯨船へ転用する計画もあったそうです。
この艦娘長門と提督の生き様は、まさにありえたかもしれない第二の人生だったのですね。

10:Beautiful World:えま
勝ち取った平和な世界の中で生きる島風のお話。
彼女の短い余生をよりそい生きる提督の目には、人の都合ばかりが闊歩する世界は
お世辞にも美しいとは呼べなかったでしょう。しかし、そんな世界を身体をはって守り抜いた
島風をはじめとした艦娘にとっては、まさに人魚姫が夢見た地上の世界のように、
見るものすべてが平和の名のもとに輝いて見えていたのかもしれません。
たとえ途上に果てるとわかっていても、彼女が幸せな世界を最期のときまで
駆け抜けていられることを願わずにはいられません。

11:誕生日の夜に:宇古木蒼
青春の風の中、大人の階段に対峙する浦風のお話。
最愛の人の前では、「かわいい女の子」よりも「ただひとりの女」でいたい。
艤装をおろし、本物の学生服に身を包んだ艦娘だって、女ごころに変わりはありません。
いつまでも女の子扱いが抜けない提督にやきもきし、ちょっと背伸びしたくなる年頃の浦風が
愛くるしくてたまらない一作です。艦娘にとっては後からってつけられたものでしかない
「誕生日」という設定が、浦風と提督の距離を縮める階段となる、
ささやかな魔法のような描写がお話を彩っています。

12:白い紙と鉛筆:にぐれど
それぞれの道を歩み出した艦娘たちのなかで、ひとつの幸せを手に入れた加賀のお話。
私情ではありますが、加賀という艦娘は、表情とは裏腹に艦娘のなかでも屈指の
豊かな感情を持っている娘なのだと解釈しております。
この作品に登場する艦娘・加賀はまさにその通りでした。
親友とのやりとり、同僚との再会、そして提督や娘へのまなざし。
彼女の一挙一動に、驚きや懐かしみや慈しみがあふれています。
そして、提督と幼い娘が互いに描いた花丸。あまりに雄弁な、ほほえましい家族愛でした。

13:ワインと日本酒:あざらく
それぞれの祖国の和平のはざまで、決断を迫られる提督とRomaのお話。
国が違えば戦況もちがう――その手があったか、と膝を打ったアイデアでした。
別離を覚悟せねばならない二人という、海外艦の彼女にしかできない、
彼女ならではのドラマティックなお話でした。
故国への忠誠を固く誓うあまりに頭まで固くなりがちな、よく似た二人のすれ違いの後、
強い本心を自覚した提督が動きだすブレイクスルーが痛快な一作。

14:アウストロメリアを掲げて:ふあか
ともに生きるため、残酷な現実を目の当たりにせざるを得なくなった秋月のお話。
命をかけて救った世界から異物呼ばわりされた彼女たちと、それでもともに生きたかった提督。
同胞を狩ることでしか世界に認められない二人の姿は、けっして幸せとは呼べないでしょう。
しかし、それでも共に生きていたいと願った二人を、だれが責められるでしょうか。
厳しい世界を視界が焼き切れんばかりの光で覆った「Beautiful World」の島風とは、
あまりに対照的。様々な作風をまとめて読める合同誌ならではの読み応えです。

15:Remain:tolntoy
社会から姿を消した提督と夕立、それを追う香取のお話。
艦娘は心などいらない兵器という前提のもとに、やはり人は戦いを繰り返す世界。
そこにあるはずの心を否定して権力の掌上で回り続ける世界と、
そんな世界を離脱し何もかもを突き放し生きる世捨て人。
そして、世捨て人の案内人になるためみずから正気に蓋をしたひとりの兵器。
いったい、「狂っている」のはどれなのでしょうか。
香取という両者のはざまの視点から狂った世界をのぞく怪作です。
(個人的イチオシでもあります)

16:潮の間に間に:中原陵成
提督のもとに集い、新たな戦場へ臨む木曾をはじめとする艦娘たちのお話。
世界共通の敵はいなくなっても、今度は更地になった海の奪い合いがはじまる。
ならば、鎮守府そして艦娘は狼煙を上げるしかない――
そんな、勇壮なファンファーレを思わせるような、はじまりの物語です。
おろした髪を再び結う、戦士である艦娘にも引けを取らない提督の覚悟がかっこいいです。

17:戦後は未だ:竹端佑
艦娘としての誇りを胸に、世界へ反旗を翻す大和のお話。
戦後まもなく解体を促された艦娘たちの無念と、そんな彼女らの心を痛いほど理解しながら
彼女たちに裁きの手を下すしかない提督の板挟みの苦しみがひしひしと伝わる一作。
鎮守府を戦場にして相対した提督や艦娘たちは、敵と味方に分かれながらも、
結局のところ同じ穴の狢だったわけです。
強い無念の思いは、コンクリートで固めたって、蓋をしきれるものではありません。

18:月の潮騒:橋本しのぶ
長い長い眠りの末に、月の上で目を覚ました矢矧のお話。
最初の1ページでしてやられたと思いました。
百年後の世界という設定がかぶったうえに、まさか宇宙だなんて……。
月の文明に対するどっしりとしたSF的考証が盤石な舞台を形成したうえで、
時を越えて望郷の思いに揺れる矢矧の心、彼女にせいいっぱい寄り添おうとする
どこかにくめない提督……まさか艦これで出会えるとは思えなかった、
新鮮な味わいの一作でした。

19:その名は:SashiGane
はい。拙作です。合同誌の後味ブレイカー担当。
お話がお話なんで、「ネタバレだから語れない!」という声をよくうかがい、
してやったりとにやにや笑っています。
ひとまず、驚いていただけたら幸いです。

1 件のコメント:

  1. 初めまして、アイアンといいます。リクエストをさせてもよろしいですか?知っていればいいんですか、知らなかった、パソコンでも調べてもいいです。ディバインゲートで、シラヌイ・ホムラとサミダレ・マブイとムラクモ・オロチの3人の尻の少し左側にお絵描きをしている炎精王イフリートと水精王ウンディーネと闇精王シャドウの3人と火炎甲士アカネと流水刀士アオトと常闇鎌士ユカリの3人と古竜王ノアの尻を描いてもらいたいです。よろしくお願いいたします。出来れば、pixivに出して欲しいです。

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